メディア・カーム恒例ロングインタビュー「ギターのおはなし」第3弾は、1998年ハバナ国際ギターコンクールで弱冠20歳で二位入賞を果たし、日本のギターシーンに衝撃をもたらし、この9月にビクターよりアルバムデビューする大萩康司さんにインタビューさせて頂きました。パリ帰国直前の大萩さんに今回のアルバムの事など楽しいお話を伺いました。インタビュー後、演奏もして頂きました。ギター界のキムタクとも云われている大萩さんの写真、コンサート情報もあります。最後までじっくりと読んで下さいね。
|
Profile 1978年、宮崎県出身。9歳より母の影響でギターを始める。高校時代、福田進一氏がその才能に注目し、海外留学を示唆。高校卒業と同時に渡仏。パリのエコール・ノルマルに留学後、その翌年にはパリ・コンセルバトワール(パリ国立高等音楽院)に第一位で入学を果たし、日本の音楽関係者の一部で若き天才登場として注目を集める。 |
![]() ビクターより9月21日リリース VICC-60176 メディア・カームにてご予約できます |
酒井 ここのところ大萩さんの年代の方々は二世ギタリスト、佳織ちゃんなど活躍がめざましいのですが、大萩さんもお聞きしたところでは、お母様の影響というのが・・
大萩 そうなんですが、全然二世という感じではなくで、母の弾いているギターがいいな・・って思って、自分の意志で始めたんですよね。
酒井 小学校、9才のときから・・
大萩 そうですね、その頃はギターは面白いなって思ったし、
酒井 宮崎のほうでいらしたんですよね
大萩 そうです。萩原ヒロシ先生が学校の中でアンサンブルを持っていて、その中で弾いていました。
酒井 福田さんに会われるまではずっと萩原先生ですか・・
大萩 萩原先生は中学に入る位までで、アンサンブルからソロに移ったんですけれど、それから5年間くらい、高校の終わりくらいまで福岡の中野義久先生についていました。
酒井 中野義久先生につかれて、九州のギターコンクールに出られたのは
大萩 最初は山口で、九州のコンクールは高校1年生くらいだったかな・・その時の審査員が福田先生だったんですよね、その時に習いに来ませんかということで、
酒井 ああ、ちょうどその頃ですね、私が福田さんから「九州に逸材がいるよ」っていうお話を伺ったのはちょっとこれは余談になるんですけど、福田さんがちょうどパリから帰ってきて、東京が本拠地ではないんですね、でも東京で勝負するんだっておっしゃって、当時の学生を集めていろいろとしたのが懐かしいなって・・
大萩 アカデミーを作って
酒井 そうです。勉強会みたいなものをね、その時に最初に集まった人たちが、斉藤明子さんとか鈴木大介さんとか・・その時の福田さんを思い出すようなエピソードですね。それからが大萩さんも変わっていったんですね。
大萩 はい。でも、福田先生に習ったのは、マスタークラスだったりとか、時々、そう半年に一回静岡に行くとか、そんな感じだったので、ほとんど一人ですね。そして、高校を終えてパリに行ったので、一時お会いできなくて・・それからポンセに師事し、その時ちょうど佳織ちゃんと同じ時期だったんですね。一年間一緒に勉強して、その後僕はコンセルバトワールへ進んだんです。
酒井 その時の先生は・・・
大萩 オリビエ・シャッサンという人です。
酒井 いまパリのギター事情というのはどうなんですか
大萩 ちょっと静かですね。ギターのコンサートがたくさんあるとかではなくて、
酒井 パリのコンクールが無くなって、あの頃からちょっと元気がないみたいですね
大萩 そうですね、でもやはりパリは中心地なので、他の色々な楽器の演奏家が来る訳です。古楽器だったらクイキン兄弟だとか、唄ではカウンターテナーのアンドレアス・ショルとか新しい人が出るし、ジャズではパット・メセニーだとか
酒井 他のジャンルからいい刺激があると、同じ世代の人たちとのジョイントなんかも
大萩 そうですね、他の楽器の人たちと、学校で合わせたり、できますね。
酒井 まだしばらくはパリですか。
大萩 あと2年です。
酒井 本拠地はパリで、ということで、学生の間は来日という形になるのでしょうか。その後は・・・
大萩 あちらで基盤があればパリでいいと思うんです。どうしても帰ってということではないんです。腰を据えられるところがあればそれでかまわないですね。
酒井 なるほど
大萩 日本に帰るんでしたら東京になるでしょうね。
酒井 コンクールそしてレコーディングなども今、ハバナですよね。ヨーロッパにもコンクールはたくさんありますが、ハバナ国際コンクールを受けるきっかけというのは
大萩 最初、福田先生にこういうのが(ハバナ国際コンクール)あるよって云われて、ハバナ・・最初海とかそんな風景が浮かんできたんですよね。すごいな、行きたいなって。ちょうど安田生命の助成金制度っていうのがあって、それで受かったんですよね。それにハバナコンクールって書いたので、がんばってみようと。
酒井 これまで大萩さんの情報って少なかったんですが、あのハバナのコンクール入賞というニュースはかなりセンセーショナルなものだったんですよ。こちらでは、大萩さん、だれだ、だれだっていう・・かつてパリのコンクールでの尾尻さんの時以来の衝撃でしたね。いまはハバナのコンクールが一番注目度が高いですからね。本当にびっくりしましたね。歴代の入賞者はすごい顔ぶれですしね、早く生で聴かせて頂きたいですね。あのときブローウェルの賞もお取りになられたんですよね、ブローウェルはもともと好きで弾いていたんですか
大萩 聴いていて好きだったんですけれど、難しそうなので、始めるのがちょっと億劫だったんですよ(笑)でも、始めているうちに、なんか、こうギターを弾くのに合理的な指の動き方とかしているでしょ、彼の書き方は。それが面白いなって思いながら弾いているうちにどんどん増えてしまった
酒井 でもそれですごくうまく流れていて・・録音もハバナですよね
大萩 はい、アブダラスタジオで
酒井 いいスタジオでしたか
大萩 ええ、天井が7メートルくらいあって、すごく大きな箱形の・・・
酒井 キューバの事情ってあまり知らないことが多かったんですが、ここのところ「ブエナビスタ」ですごく注目されていますし、逆に映画で素晴らしいスタジオがあるんだって知ったというのがありますけれど、キユーバブームですよね。今回の曲を拝見して、ブローウェルっていうのはデビューとしては非常に珍しい、そう曲の集め方としてはですが、メジャーレーベルぽくないというか、僕たちは非常に好きですけれどね、
大萩 そうですか、良かった・・僕としてはみんなが聴けるものばかりではなくて、ブローウェルの最高傑作といわれていた「永劫の螺旋」も入れたかったし、あれでブローウェル賞も取ったんですよ。だからどうしても入れたかったし、あとポピュラーなものも入っているんですけど、それにバロック音楽・・
酒井 コルベットとか・・2曲ありましたね、あの辺の古い曲も非常に興味がある?
大萩 ええ、どちらかというとそちらの方が興味があるんですね。まあ得意というと現代の方になるんですけれど
服部 CDを聴かせて頂いて、すごく変わっているな・・っていうのが第一印象にあって・・
大萩 どんなところが・・・
服部 例えば、今の若い人たちというか、ヨーロッパの人たちってああいう風には弾かないでしょ、どうなのかな・・もう少しガチッと弾くよね、なんて云うのかな、もうちょっと楽譜通りに弾くような感じ?・・でも大萩さんのは一歩外して好きなことしてるよね
大萩 うんうん
服部 それは誰かの影響ですか
大萩 最初は、ばちっと練習して楽譜通りに弾くのだけれど、それも大事な事だけれど、でもやっぱりキューバの雰囲気の様なもの・・、そんな香りを出したかったっていうのがあって、しかもキューバで録音して周りの環境みたいなものがあって、そこでガチッと弾いても全然面白くないの、キューバの人たちの前でそういう演奏をしてもそれは面白くない、そこでキューバの中での流れで云えばメロディとか、そんな雰囲気が感じてもらえれば・・って、音を聴いてもらって「こんなかな」っていうのが想像してもらえたら、それはとてもうれしいんです。たしかにためとか、すごく入っているんだけれど、それが不快だったら困るけれど、
服部 全然そんな事なかった、逆に今までに聴いたことがなくて新鮮だったですね。また違ったタイプのギタリストが誕生したな・・って
大萩 多分また違う曲をやれば違う雰囲気がでると思うけれど、例えばバッハだったらもちろんガッチリと弾くだろうし、武満だったら本当に楽譜通り弾いた方がかっこいいからそれはそうすると思うけれど、でもブローウェルはポピュラーテイストがすごく入っているから、ある面では自由にやる場面もあっていいかな・・
服部 もう一ついいなって感じたことは、すごく響きを大事にしているなっていう事なんですよね
大萩 うん、ギターっていうのは6本しかないんだけれど、ピアノなら鳴らした後、離しても鳴っているでしょ、そんなテクニックが欲しかったんですよね、鳴っているもの、やはり和音があるわけだし、それがきこえないと情景も浮かばないだろうし、印象派なんてたぶんそうなんだと思うし、ラベル、ドビッシーはあまりやりたくない、ギターでは出し切れないと思うから。自分の耳と、あと他の楽器をよく聴いているから、グルドのビアノとか、ツメールマンのショパンとか、聴いていると、音が飛んでいくもの、飛んでいってお客様が受け止めるっていうもの、受け止めるまでの距離とか時間とかが感じられた、それもギターで出来たらな・・って思っている
酒井 非常に好きなのはバロック音楽とかルネサンスとか。今19世紀のギターを使ってフェルナンデスとか色々な人が持ち替えたりしていますよね、モダンとか、ああいうのはどうなんですか
大萩 合いますね、ですから今度11月3日にGGサロンで、フランソワール・コックの曲を弾くときに19世紀ギターを使ってみようと思っているんです。7弦のラコートです。時代が近いから・・・
酒井 面白いですね。ところで、今使っていらっしゃる楽器を教えてください。
大萩 ブーシェの62年です。製作番号は書いてないんですよ、8月5日に作ったって書いてあるんですけど・・
酒井 ハバナの時は違いましたよね
大萩 ハバナの時は松村さんです。(注:松村雅亘さん)
酒井 そうですよね。写真で松村さんかなって思いました。
大萩 はい、いい楽器です。
酒井 松村さんは長く使っているんですか。
大萩 はい、高校時代と留学してから2年位はずっと使っていました。ブーシェは去年手に入れました。
酒井 どうですか
大萩 とても良いですね。ブーシェなのにちょっと重いんですね、裏が3枚板になっていて、メカニックの方はオリジナルではなくて、ロジャースを付けているんですけれど。
酒井 ホームページを見てくれている人たちは、楽器は何だ、糸巻きは・・って興味があるんですよ
酒井 今後の活動についてお聞かせ下さい。
大萩 パリに戻って9月9日に教会でフルートとコンサートをします。9月19日はソロコンサートがあります。それで学校が始まります(パリ)。その後、日本に一時戻って10月14日に東京女子医科大学の文化祭で弾きます。100周年のミレニアムコンサートということです。その後は10月29日に日本フルートフェスティバル、10月30日は北九州国際音楽祭でフルートの瀬尾さんと弾きます。彼は前回のランパルコンクールで入賞を果たした人です。その後11月2日に山野楽器主催でニッパーズギンザで、11月3日GGサロン、11月5日宮崎県立芸術劇場でジョイントコンサート、12月15、17、20日大阪でフルートの人とジョイントします。年内はこんなところです。
酒井 来年のコンサートホールでのデビューを楽しみにしています。最後にこのCDの聴き所を
大萩 テクニックまあまあなんですが(笑)、とにかく「音」を聴いてほしいですね、ギタリスト的な音ではなくで、音楽全般で聴いて頂いて、いい音だっていうのを目指しているんです。
酒井 ここ10年位「音」というのが云われなくなって久しいですからね、久々にギタリストの方からこう云われるのはうれしいですね。バルエコが出てからいわゆる技術という流れがありましたから、目指す人もそういう方向が多かったものですから、とても違った面からアピールしていただくのはとても素晴らしいな・・って思います。音楽を勉強しなくては分からない事ではなくて、自然に聴いて「音」で入っていけるというのはとても大切な事ですよね。すごく期待しています。私たちも若い世代にアピールしていきたいと思います。どうか頑張ってください。今日は本当にありがとうございました。
大萩 ありがとうございました。
|
|
演奏して頂いたのは、ブローウェルの「11月のある日」、「子守歌」他です。 初めて大萩さんの演奏を目の当たりにした私たちでした。さりげない弾きだしの中に知らず知らずの内に彼の空間の中に包まれていました。 素晴らしい音の空間・・何と音楽的な「間」・・・ ●コンサート情報 女子医大祭ミレニアム・コンサート 大萩康司ギター・コンサート |